「無料のプログラミングスクールを受けてみようかと思っているんだけど、無料だと質が低かったりするんじゃないかな? 入る企業もブラック企業かもしれないし、利用するか悩む…」
今回はこういった疑問に答えていきます。
タダより高いものはないと言う言葉がある通り、人間は無料のものに対して懐疑心を覚えるものです。
ネットで検索すると「無料のプログラミングスクールを使うとSESのブラック企業に入るしかない」という意見が散見されますが、結論から言うと、これは間違いです。
本記事の内容
- 無料プログラミングスクールのビジネスモデル
- SESは本当にブラック企業なのか?
- 有料スクールと無料スクールの違い
- 未経験からエンジニアになるための最適な方法
僕(筆者)は、フリーランスのエンジニアとして活動しながら、エンジニア向けの転職エージェントやWebメディアの運営を生業としている者です。
エンジニアの仕事環境についてはこれまで様々な側面を見ていますので、エンジニアへのキャリアチェンジや仕事事情については詳しい部類だと自負しています。
今回は、無料プログラミングスクール経由でのエンジニアになることについて、僕の知っていることを分かりやすくご紹介します。
Contents
無料プログラミングスクールのビジネスモデル
まずは無料プログラミングスクールのビジネスモデルを知っておくべきなので簡単に説明します。
「無料スクールってなんで無料でできるの?」という疑問を持つかなと思いますが、無料プログラミングスクールは、スクール卒業生の採用が決定したとき、企業から紹介料が入ることによって運営が成り立っています。
仕組みは下図の通りです。
スクール側は自社でエンジニアの卵である受講生を受け入れ、自社のスクール機能で1ヶ月〜3ヶ月程度で学習サポートを行います。カリキュラムが修了すると、今度は就職サポートに移ります。
スクール運営会社は、エンジニアの卵を採用したい企業に対して「この方はいかがですか」とスクールの受講生を紹介をします。そこで「じゃあ面接に進めましょう」と話が進み、最終的に両者が合意して採用が決定したら、企業側からスクールに紹介料として報酬が支払われる仕組みです。あとは実際に入社するだけです。
ちなみに、この報酬料はだいたい採用決定年収の1/3ほどの金額で、一人決まるごとに100万円以上ものお金がスクールには入ってくることになります。年収の1/3ですよ。魅力的な報酬ですね。
この仕組みは一般の転職エージェントと同じビジネスモデルで、世の中の転職市場は概ねこのような報酬体系になっています。ですので、企業としても採用が決定したら報酬を払うのは当然と認識しているので、このビジネスが普通に成り立っています。
このような明確な理由があるため、受講生側から受講料を1円も取らずとも、スクール側としては経営は成り立ちます。
理由なき無料に対しては全力で疑ってかかる必要があると思いますが、無料プログラミングスクールについてはちゃんとした理由があるということです。
したがって、無料スクールだからと言って、講師の質が不当に低いとか、カリキュラムが適当とか、全員ブラックに押し込まれるとか、そういうことはないので安心してください。
スクール間の競争こそ激しくなっていますが、そもそもビジネスモデルが儲かる仕組みですから。適当な講師を安値で雇い、適当にレッスンをしているような仕組みにはなってません。
そもそも世の中に無料で使えるサービスなんてたくさんあります。例えばリクルートのWebサービスはだいたい無料で使うことができます。これは、B to CのB側にキャッシュポイントを持ってきているので、C側の僕たちは無料でサービスを使うことができるようになっています。
要はキャッシュポイントをどこに置いているかだけの違いなので、「無料だから質が低い」とか「有料なら質が高い」というのは、そもそも見当違いな指摘なんですね。ビジネス全体を俯瞰し、本質を見ることが大事です。
SESは本当にブラック企業なのか?
さて、無料プログラミングスクール経由でエンジニアになると、基本的にはSESとして就職することが一般的です。SESとはシステムエンジニアリングサービスと言うものでして、仕組みは以下の通りです。
- ・採用企業はエンジニアをSESの正社員として雇用
→エンジニアは上記企業の客先(案件の依頼元)に常駐させられる
→客先オフィスに常駐して仕事をする
こういう仕組みです。要は、SESの正社員を採用する企業は様々な顧客から案件を受注している企業で、その客先の要望に合わせて客先にエンジニアを常駐させるために、スクール出身者を雇用するという仕組みです。
ここで良く言われていることが、SESの常駐先は全部ブラック企業なんじゃないか?ということです。
SES事業者からすると常駐先はお客さんですので、たとえ常駐先で過酷な労働をさせられたとしても、なかなか強く言えないのでは? 結果長時間労働させられるのでは? ということです。
これらの問いに対する回答としては、あまりに一面的な見方ではないかと。確かにSES事業者からすれば常駐先は顧客ですが、顧客にも様々な企業があり、その事実が無視されていると言わざるを得ません。
労働環境が「ブラック」になるかどうかは、常駐先の顧客次第です(SES事業者の責任も当然あります)。僕は実際にSESを雇用する企業の採用にも手伝っていますが、当然ながら、すごく環境の良い常駐先もあります。毎日ノーストレスで仕事をエンジョイしているエンジニアもいます。
常駐先の全ての会社がブラック企業って、そもそもそんなSES事業者を就職先に選ばなければ済む話です。今はVorkersなどのサイトで企業の口コミを調べられる時代です。
一方、常駐先にブラック企業が含まれている可能性が排除できない点も事実です。100%防ぐことは難しく、当たりはずれがありますので、運やスキルの部分にも左右されます。実際「案件ガチャ」なんて言葉も業界内であります。
そもそも一般の転職サイトや転職エージェントにもブラック企業はたくさんあるので違いはない
無料スクール経由で環境の良くない就職先に当たる確率があるとしても、一般の転職サイトや転職エージェント経由でも、ブラック企業に当たる確率はあります。
例えば、転職サイトのリクナビNEXTだってSESの会社はたくさん求人を出していますし、転職エージェントもSESの求人を扱っています。その中には労働環境の良くない企業だって少なからずは紛れています。
ですので、そもそもプログラミングスクール経由で就職する場合も、一般の転職サイトや転職エージェント経由で就職する場合も、どちらを使えば必ずブラック企業を避けられるということはありません。そういう意味で、両者の就職に大きな違いはありません。
ただし、プログラミングスクール経由での就職と、転職サイト・転職エージェント経由での就職難易度は違います。その辺りはプログラミングで就職できるレベルってどれくらい?【プログラマーになる手順付き】の記事で具体的に書いているので詳しくはこちらをどうぞ。
SESで現場経験を積むことが一つの道
いろいろ述べてきましたが、無料スクールや一般の転職サービス経由に限らず、未経験からエンジニア就職をする場合はSESで現場経験を積むことが基本的なルートの一つです。
前述の通り「SES事業者=全部ブラック企業」という見方はあまりに偏った見方です。常駐先の企業に良い会社は事実ありますし、僕も実際に採用に携わっている立場ですので、常駐先で楽しく仕事をされているエンジニアもたくさん知っています。残業時間の徹底をしているところも増えてきていますし、そういう常駐先にいる方は、普通に18時台には帰宅しています。
SESの職場はエンジニアとしてスキルアップもしていけます。1〜2年しっかり経験を積んで、その後に好きなところへ転職したり独立してフリーランスを目指せばOKです。会社を利用してやるくらいの気持ちの方が、少ない時間でも多くのスキルを吸収できるかなと思います。
とはいえ前述通り、運悪く良くない常駐先に当たってしまうこともあります。でもそれは事前にスクール側に就職先の事情について詳しく聞いたり、その会社のことをリサーチすることで防げる部分でもあります。
ですので、無料プログラミングスクールを使う場合は、必ず事前に面談やカウンセリングを実施してもらうようにしましょう。これをやっておくだけでも、ブラック企業に当たる確率は減らせます。
それでも万が一変な常駐先に当たってしまった場合は、すぐに転職を検討すればOKです。今エンジニアはあらゆる職種の中でも最も人手不足なので、受け入れ先は必ず見つかります。良い環境を見つけたらそこで1〜2年間頑張ってスキルアップし、その後は生きたいように生きましょう。
最初から優良企業へ入りたいなら有料スクールの方が実現しやすい
一方、一番最初から「自社開発」などの優良企業へ転職したいなら、有料スクールで、質の高い転職サポートをしているスクールを利用すると、一番実現しやすいです。
これについては「就職・転職支援に強いプログラミングスクール5選【現役エンジニアが徹底比較】」の記事でまとめているので、参考にしてみてください。
まとめ
- 無料プログラミングスクールが無料である訳にはまともな理由がある
- SES=ブラック企業というのはあまりに一面的な見方。常駐先にはホワイト企業もたくさんある
- 無料スクールも転職エージェントも、未経験であればSES就職が一般的
- 無料スクールを使ってSES就職し、1〜2年実務経験を積むことが一つの道
- 一社目から自社開発など優良企業にこだわりたいなら、転職に強い有料スクールも検討すべき
上記の通りです。
ということで、まずはプログラミングスクールで勉強するところからスタートです。就職前提で受けるなら、必ず無料カウンセリングや面談、相談の時間はもらうようにしましょう。
大抵の就職サポート付きスクールは無料カウンセリングなどをやっていますので、ここで就職先について詳しく聞き出すと良いです。プログラミングスクールを良い意味で利用し、使い倒してやりましょう。
質の高いスクールは現役エンジニアがおすすめするプログラミングスクール11選【徹底比較】の記事で有料・無料問わずまとめているので、参考にどうぞ。
就職・転職目的なら就職・転職支援に強いプログラミングスクール6選【現役エンジニアが徹底比較】がおすすめです。
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